【感想】「劇場版infini-T force さらば友よ」見てきました。【後半ネタバレ有】

 TV版から全話見ていたinfini-T forceが昨日2/24から上映が始まったので早速見に行ってきました。3DCGを使ったアニメーションで派手なアクションや重厚な音響が特徴の作品なので劇場で見るのに非常に映える作品だと思っていたので凄く楽しみにしていました。映画の感想を書いた経験は少ないですが、せっかくなので書いていこうかなと思います。

(一応前半はネタバレ無の範囲で書いていこうと思います。)

ポスター画像

 そもそもこの作品についてあまり知らないという人もいると思うので軽く説明しますとアニメ制作会社の老舗であるタツノコプロの55周年記念の作品になります。タツノコと言えば長い歴史の中でガッチャマンヤッターマンと言った数多くのヒーローを生み出してきた実績があります。これらのヒーローを現代向けに復活させ、1つの作品にクロスオーバーとして集結させようというのが今作の主な目的です。実際今作で登場するのはTV版の場合は大鷲の健ガッチャマン)、キャシャーンテッカマン、ポリマーの4作品から各1キャラずつ。劇場版だとそれに加えてガッチャマンからコンドルのジョーが登場します。しかし、そのまま登場させるのではなく、キャラクターのデザインも昔ながらのシンプルなデザインではなく、色濃く特徴をつけたりファッションをオシャレにしたりと大胆なアレンジが加えられています。逆に変身後のデザインに関しては原点の特徴をしっかりと抑えながらCGを使ったアクションがより良く見えるようなアレンジが施されています。例えば大鷲の健の場合は原作の布地のようなデザインのスーツの上にメタリックな装飾が全体的に施されています。

 

 では本題の感想に入っていきたいと思いますが、結論から言ってしまえば面白かったと思っています。その理由としては冒頭でも挙げた今作の魅力がしっかりと引き継がれているからです。アクションはモーションキャプチャーを利用して実際の人の動きをベースにしているのでリアリティがあって重力感のあるアクションが魅力だと思っています。劇場版の場合、一対多の描写が多いため敵の猛攻をいなしながら各ヒーローの特色を活かした攻撃を加えていくシーンはとても爽快感がありました。音もこのアクションを印象付ける効果があって、打撃音がとても重く痛そうに感じるというのがこのアクションの重さを更に強調しています。各ヒーローの派手な必殺技や爆発音も迫力がある効果音がついておりこれは今だからこそ出来た演出かなと思いました。しかもこの音を劇場のスピーカーで聞けるのだからこのアクションシーンが見れただけで十分元は取れると思っています。

 気になった部分としてはストーリーが内容に対して時間が足りなかったように感じました。TV版は伏線や驚きの展開なんかはありましたが、対立の構図としてはわかりやすく原作へのリスペクトや描写の掘り下げとしても秀逸だったと思います。対して今回はガッチャマンの世界をベースにしたIFの世界ということでやや人間関係がわかりづらくなっていたり、その中で正義の在り方を強く問う内容で全体的にシリアスな展開が続くので、少し飲み込みづらい話になっているように感じました。また、詳細は伏せますがTV版との矛盾を少し感じる部分もあったりともう少し良く練ってもらえなかったものかというのが正直な感想です。

 

 TV版を視聴済みの方は映像や音響に惹かれた方は是非見に行くことをおすすめします。物語が大好きだった方は少し期待に答えられないかなと思います。完全に未視聴の方は出来る限りTV版から入ることをおすすめします。一応独立した話になっているので未視聴でも楽しめるとは思いますが、劇場版は後日談の扱いで劇場版の本編に入る前にTV版のダイジェストが入ります。しかし、このダイジェストが頭と尻だけ切り取ったような内容になっているので各キャラクターの個性(特にエミ)や世界観について逆にわかりづらくなってしまっていると思っています。なので、是非TV版から見てほしいです。

 ネタバレ無しでの感想はここまでになります。ここから先はネタバレも含めながら少し書いていこうと思いますので問題ない方や視聴済みの方は是非お付き合いください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今作の物語の大きな中心になるのはそれぞれの異なる正義です。TV版でも語られたものと同一なものとして、「正しいことを貫き通し悪人にも手を差し伸べるまっすぐな正義」というのが1つ。これはヒーロー達がそうであり、城二とベルリンの関係性なんかがかなり印象的だったと思います。もう一つは「悪事に手を染めてまで自分が正しいと思ったことを貫き通す正義」があります。これはTV版だとZが該当しており、劇場版だと南部博士が該当します。これを正義と言ってしまって良いのかと言えば曖昧なラインだとは思いますが、Zの娘を思う気持ちや南部博士の科学忍者隊を失い極限まで追い込まれた状態の最後の選択肢として特異点を利用することに至ったことを踏まえると当人からしたら必死の思いで目的を達成しようとするその熱意は本物であると言えます。これらの対立に加え、劇場版で登場するジョーはまた違った正義として「悪を徹底的に裁く非情な正義」を持ったヒーローと言えます。悪者は救いようがないと割り切り抹消しようとするダークヒーロー的な思想ですね。つまり、今作の場合、敵対している南部博士を殺すために行動しているのですが、この行動原理について健と何度か揉めることになります。

 色んな正義の在り方があってそれについて争い合うというのはよくある構図で、それに対してあまり文句はないのですが、問題は結末ですね。最終的に南部博士は研究の殆どを失った末にジョーに殺されます。そして、そのジョーも南部博士の研究を利用しようとしていた佐々岡という人物に南部博士を追い込んだところで逆に追い詰められて殺されてしまいます。この佐々岡という人物もある種、裁かれるべき立場に有りながら改心の余地があったわけでもなく健によって残された研究の一部を取り上げられるのみで終わってしまいます。これがTV版よりも欠けている部分かなと思っていてかなり納得できていないです。

 Zの件は笑の説得やヒーロー達の協力もあって、最終的にZが我を取り戻し元ある形に戻りました。また、カーンも同様に心境の変化によって歪みがなくなったと言ったどちらも改善されたエピソードがありました。

 しかし、今作の場合、ジョーの過激な思想が落ち着くこともないし、南部博士がヒーローの目的を理解してくれたわけでもないまま終止符を打たれてしまったというのはかなり後味が悪かったです。例えば、南部博士が特異点を利用することのデメリットを重く受け止めて譲歩する展開があった上でジョーも相手に手を差し伸べることに多少の理解を示すような描写があればまた良かったのですが…。更に言ってしまえば、周りを利用してまで他人の利権を求める悪党が一番軽い罰を受けているというの納得できませんしね。

  あとはTV版で綺麗に纏まって終わった部分が再び散らかってしまった感じがありました。特に元の世界に帰れば「二度と会うことはない」と言っていたことに関して無かったことになっていたのが気になります。劇場版はメタ的な話をすれば予めTV版放送中に劇場版もあることがわかっていたので再び合うということも「1度だけ仕方なくなんだろうな」と言った感じで気にはならないんですけど、そこから先があるかわからない劇場版でジョーは死んで健は元の世界には戻らずに劇場版の世界に残り、ガッチャマンの世界は他のヒーロー達で穴埋めを頑張るという事を言っていました。どういうことなのって感じですね。だってTV版で「自分たちを待っている人達がいるから元の世界に戻らないといけない」って言ってたじゃないですか。なんで平気で掛け持ちしようとしてるのか理解できないです。

 そういう意味ではガッチャマンの世界も原作の世界のことを考えると科学忍者隊から2人もその世界から姿を消してしまっていることに違和感を感じます。IFをベースにした話とは言えヒーローの生死は原作の世界の出来事に収めるべきだと思いますし、それを外の世界で勝手に歪ませてしまうのは作品の趣旨として正しいのか疑問に思います。

 特にTV版は対峙する敵をオリジナルのキャラにすることで結末を出来る限りわかりやすくなるようにしていましたし、各ヒーローたちも原作と連続した時間の中から抜き出されていることを暗示していて、ちゃんと元の形に戻るような配慮もされていました。劇場版がTV版から繋がる話ならばその気遣いはしっかりと引き継ぐべきですし、それがされていないのは原作やTV版へのリスペクトが欠けているように感じました。

 

 あとアクションについても物足りない部分が1つあって、それが南部博士が量産したバードスーツを着た人間を相手にするシーンがメインになるのですが、そのせいでTV版の3話や11話のような派手な展開というのが少ないです。そのせいで大技を出す機会も少ないのでせっかくの劇場スクリーンを活かしきれていないように感じました。多少の急展開でもいいのでそういう展開があるとまた満足感が違ったのかなと思います。

 

 言いたいことはこれぐらいですかね。ケースと平行世界に関してもTVと一致しないように感じる部分があったんですが、これに関しては確信がないので突っ込みません。ヒーロー物は理屈よりも場面と演出で説得力をもたせるのが重要だと思いますが、今作の場合、内容を複雑化した割にキャラ描写やテーマへの回答など最低限の理屈すら用意できていないと感じました。次の展開があったらTVが先か劇場が先かはわかりませんが、しっかりと考えられたものが見たいと思います。楽しみにしてます。